ジョー・メイフィスとは何者か?
まぁまずは見てください! このギター このスピード!
生い立ちと音楽との出会い
ジョー・メイフィス(Joe Maphis)は1921年5月12日、アメリカ・バージニア州で生まれた。幼い頃から音楽に親しみ、家族で奏でるフォークやカントリー音楽の中で育った彼は、自然とギターを手に取るようになる。
その音楽的才能は少年時代から際立っていた。10代の頃には既に地元で知られる存在となり、ギターのみならず、バンジョー、フィドル(バイオリン)、マンドリンといった弦楽器全般を自在に操っていたという。
10代の終わり頃から、アパラチア地方の音楽シーンでセッションマンとして活躍し、彼の速く、正確で、かつ楽しげなプレイは、徐々に西海岸の音楽業界の耳にも届くようになった。
“キング・オブ・ザ・ストリングス”と呼ばれた理由
1950年代に入り、メイフィスはカリフォルニアに拠点を移す。ここで彼は本格的にセッションギタリストとして活動を開始し、“King of the Strings”=弦楽器の王様と呼ばれるようになる。
その理由はひとつ──異次元のテクニックである。
彼のギタープレイは、それまでのカントリーギターにはなかった驚異的な早弾きと正確無比なピッキング、そして聴いているだけで楽しくなるような陽気で軽快なフレーズに満ちていた。
ギターだけでなく、バンジョーやマンドリン、フィドルを弾かせても一級品。それゆえ“ストリングスの王様”と呼ばれるにふさわしい存在だった。
華麗なるキャリアと代表作
カントリーシーンでの活躍
1950年代初頭、メイフィスはカリフォルニアのテレビ番組『Town Hall Party』にレギュラー出演。この番組は当時のカントリーミュージックファンの間で絶大な人気を誇っており、彼は一躍“お茶の間のギターヒーロー”となる。
特に番組内で披露される彼のギターソロは「こんなに速くて正確なギター、見たことがない」と多くの視聴者を驚かせた。
その名声を背景に、ソロアルバムやセッション仕事も数多くこなすようになり、カントリーミュージック黄金期の名盤の裏には、ジョー・メイフィスの名前がクレジットされていることが多い。
圧巻のテクニックが詰まった名盤たち
彼の代名詞ともいえるアルバムが**『Flying Fingers』**(1957年)。タイトルの通り、「飛んでいる指」を思わせる超絶技巧の数々が収録されており、今聴いてもなお、その速さとリズム感には圧倒される。
さらに、**『Fire on the Strings』や『Flat-Picking Spectacular』**といった作品も、彼のギターテクニックを存分に堪能できる名盤だ。
これらのアルバムは、単なるカントリーミュージックの枠を超え、ギターという楽器の可能性を広げた歴史的作品と言っても過言ではない。
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妻ローズ・リー・メイフィスとのデュオ活動
ジョー・メイフィスのキャリアを語る上で欠かせないのが、妻ローズ・リー・メイフィスとのデュオ活動だ。
ローズ・リーはシンガー/ギタリストとしても才能があり、ふたりは夫婦デュオとして多くのステージをこなし、アメリカ中をツアーして回った。
彼女の柔らかく温かな歌声と、ジョーの疾走感あふれるギターが見事に調和し、ライブでは必ずと言っていいほど観客を魅了した。
ジョー・メイフィスは、その卓越したギターテクニックと多才な演奏スタイルで、多くのアーティストと共演し、音楽界に大きな足跡を残しました。特に、コリンズ・キッズやマール・トラヴィスとの共演は、彼のキャリアにおいて重要な位置を占めています。
コリンズ・キッズとの共演
コリンズ・キッズは、兄妹デュオのラリー・コリンズとローリー・コリンズからなるロカビリーグループで、1950年代後半に活躍しました。ラリー・コリンズは幼少期からギターの才能を発揮し、10歳の頃にはジョー・メイフィスと共演を果たしています。彼らはテレビ番組『Town Hall Party』での共演を通じて、息の合ったギタープレイを披露し、多くの視聴者を魅了しました。特に、モズライト製のダブルネックギターを使用したパフォーマンスは圧巻で、二人の超絶技巧が際立っていました。
また、ラリー・コリンズとジョー・メイフィスは、共作した楽曲「Hurricane」などで、その卓越したギターテクニックを披露しています。この曲は、二人のギターが激しく絡み合うインストゥルメンタルナンバーで、彼らの共演の代表的な一例として知られています。
マール・トラヴィスとの共演
マール・トラヴィスは、カントリーギターの名手として知られ、独自のフィンガーピッキング奏法「トラヴィス・ピッキング」を確立したことで有名です。ジョー・メイフィスとマール・トラヴィスは、共にギタリストとしての才能を認め合い、数多くの共演を重ねました。彼らの共演は、ギターの掛け合いやハーモニーが特徴で、聴衆に強い印象を与えました。
特に、アルバム『Country Music’s Two Guitar Greats』では、二人のギタリストが互いの技巧を存分に発揮し、カントリーミュージックの魅力を余すことなく伝えています。このアルバムには、マール・トラヴィスのオリジナル曲「Corrine Corrina」も収録されており、二人の軽快なギタープレイからは、スタジオの楽しい雰囲気が伝わってきます。
ジョー・メイフィスは、これらの共演を通じて、後進のギタリストたちに多大な影響を与え、カントリーやロカビリーといったジャンルの発展に寄与しました。彼の音楽的遺産は、今なお多くのミュージシャンやファンによって称賛されています。
ジョー・メイフィス伝説の裏側エピソード
あの“モズライト”のダブルネックギター
ジョー・メイフィスを語るうえで欠かせないアイコンがある。
モズライト製のダブルネックギターだ。
彼のリクエストで特注されたこのギターは、上段が6弦、下段が12弦という構造。驚異的な早弾きフレーズを支えるため、ネックが2本あることによる音域の切り替えと多彩なプレイが可能となった。
のちにモズライトギターは、ベンチャーズやロカビリー界隈で人気となるが、その火付け役の一人がジョー・メイフィスと言われている。
超絶早弾きを支えた独自の練習法
あの信じられないスピードと正確さは、徹底した練習の賜物だった。
メイフィスは「一日6時間は指を動かしていないと落ち着かない」と語っていたと言われる。
さらに、楽器ごとにスケール練習を繰り返し、指の独立性とピッキングの正確さを極限まで高めた。
彼にとってギターは「身体の一部」となるまで弾き込むものだった。
名だたるギタリストたちへの影響
ジョー・メイフィスのギタープレイは、ジャンルを超えて多くの後進ギタリストに影響を与えた。
特にロカビリー、サーフミュージック、さらにはブルーグラス、ロックンロール界でも彼の超絶ピッキングは模倣され、多くのギタリストが彼のフレーズをコピーして育った。
あのチェット・アトキンスやジェリー・リードなど、カントリーギター界の巨人たちも彼の影響を受けており、「ジョー・メイフィスがいなければ、今のカントリーギターは存在しなかった」とまで言われている。
ジョー・メイフィスを聴くならコレ!おすすめ作品3選
🎵 Flying Fingers(1957)
ジョー・メイフィス入門として最適なアルバム。とにかく“指が飛んでいる”プレイを体感できる。
🎵 Fire on the Strings(1959)
速さだけでなく、アンサンブルとしての完成度も高い一枚。カントリーだけでなく、ブルーグラス好きにも響く内容。
🎵 Town Hall Party Live Recordings
テレビ番組『Town Hall Party』でのライブ音源。映像もYouTubeなどで見ることができるので、彼の指先の動きと音を同時に楽しめる。
ジョー・メイフィスの魅力まとめ──彼がギター界に遺したもの
ジョー・メイフィスは、単なるカントリーギタリストではない。
彼は**「ギターはこんなにも速く、自由で、楽しく弾ける楽器なんだ」ということを世界に知らしめた先駆者**だ。
その圧倒的な速弾きとテクニックは、後のギターヒーローたちが踏み台とした“原点”とも言える。
もしあなたが「ギタリストの歴史」を語りたいなら、ジョー・メイフィスの名前を知らずに通り過ぎてはいけない。
彼は、弦の王様(King of the Strings)として、今なおギター史の片隅で静かに輝き続けている。